学会の沿革
Outline and Brief History of The Japanese Society for Multipahse Flow [ No English Version ]
混相流(Multiphase Flow)に関わる学問や技術は、これまで機械工学、原子力工学、化学工学、土木工学、資源工学、宇宙工学、環境科学、医生物化学など工学・科学における一分野として研究・開発がなされ、気液二相流、固気二相流、固液二相流、スラリー、液―液二成分流あるいは固気液三相流などとして、それぞれの分野ごとに独自に発展し、固有の体系がつくられてきました。これらは、また、エネルギー変換、粉粒体のパイプライン輸送、河川流砂および海岸漂砂の制御、反応促進、クリーンルーム、ロケットエンジンなどの技術として、泥流、土石流、雪氷流、微粒子の拡散などの自然現象としても研究・開発されてきました。
ところで多相からなる物質の混合物の流動、伝熱および反応に関する現象および解析においては共通で相似な事柄が多く、これらを総合して「混相流」という共通の立場で取り扱うことが好ましいと思われるようになりました。これによって、一特定分野の研究・開発の成果が他分野にも応用され、波及しあって、すべての分野での一層の発展が期待されるからであります。このため、従来の機械、原子力、化学工学、土木などの学問・技術体系を縦とすれば、「混相流」という横のつながりをもつ新しい体系を設立する必要性が強く認識され始めました。このような動向は国際的に見ても同様であり、1973年には学術雑誌 “International Journal of Multiphase Flow” が発刊されています。
このような状況を受けて、日本学術会議は1973年に混相流研究所の設立を勧告しました。1982年、日本学術会議水力学水理学研究連絡委員会の下に「混相流小委員会」が設立され、従来の気液二相流、固気二相流および固液二相流に対する各独立の研究組織を横に結び連絡をはかるための活動が開始されました。この小委員会の活動として、(1)個々の二相流分野の研究および事業に関する情報収集および情報交換、および (2) 混相流としての総合的立場を社会的に広めるために混相流の全体系を講述する「混相流シンポシウム」が開催されてきました。
この「混相流シンポジウム」は毎年1回開催され、その論文集は有用性により広い分野の研究者・技術者から高い評価を得てきました。このシンポジウムは5年に渡って継続され、従来の科学・技術の縦の組織とよく連携を保ちながら混相流に関わる横の組織としての有用性を実証してきました。これらの実績に基づき、上記小委員会が中心となり日本混相流学会の設立が建議され、1987年7月に設立総会が開催されました。1987年7月には混相流学会誌の第1号が発行され、その活動は今日まで発展の一途をたどってきております。
現在、我が国は、一部鉱工業分野に見られるように、産業構造の急速な転換が迫られており、厳しい状況下にあります。このような困難な時期にこそ、国内における学会活動のみならず、国際的に諸外国の学協会との連携をはかって、より高度な科学・技術の発展を通じて、21世紀に向けての新しい科学・技術の創造に寄与すべきであり、本学会の果たすべき役割も益々大きなものがあるといえましよう。