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会長挨拶

村井 祐一
MURAI Yuichi

2023年度の総会におきまして、第37期日本混相流学会会長を拝命致しました。観測史上最高気温を記録した札幌で、4年ぶりにオール対面で混相流シンポジウムが開催され、皆様と顔を付き合わせて交流が出来たことを大変嬉しく思います。同時に過去3年間、本会の活動を維持すべく、オンラインで研究者ネットワーク維持にご尽力された役員の皆様に厚く御礼申し上げる次第です。

異分野の研究を混ぜる混相流学会、全国の混相流研究室を繋げる混相流学会、若手を育てる混相流学会、そして何よりも参加者が相互に厳しく批評し合う混相流学会、これらの役割が世代を超えて遺伝されてきたのが本会の価値でしょう。何よりも研究対象そのものに面白さと重要性が詰まっています。ナノ分散体など謎めいた特異現象の科学的探求から、待ったなしのカーボンニュートラル研究、それにA.I.をツールとした混相流研究スタイルの刷新など、ごちゃ混ぜで情報共有し、各々が新しい挑戦の種を産んでいく。会員数規模ではコンパクトですが、周囲に強い光を放つ本会の特徴は、極めて活発な研究者で会員が構成されていることにあると感じています。混相流シンポジウムの総会の最後に、就任のご挨拶で会場から爆笑を買った一言は「会員数は徐々に減少していますが安心して下さい~怖い先生ばかり残っています」。スポーツも学問も自分より強い相手と対峙して鍛えられる。学会に参加してその経験を買う楽しみは、学生も社会人も同じでしょう。

私が混相流の研究を始めたのは30年前、修士課程の時にICMFが筑波で開催され、混相流シンポジウムが仙台で開催された年でした。内外から集まる研究者が、気泡流や界面流れを夢中に究明している発表を聴いて、自分と同じ研究が世界では本気で展開されていることに感激しました。ロビーや懇親会では「これから単相流の人たちは混相流に雪崩れ込んで来るよ」と良く言われました。加えて、研究室に出入りする海外の研究者の滞在をサポートしたり、企業との共同研究を補助しているうちに博士課程への進学を決意しました。過去20年間、全国の大学では博士課程進学者数が減少の一途という統計ですが、その対策は各大学だけではなく学会の役割も大きいでしょう。私自身は修士課程で混相流夏合宿(後に学生会、現 若手夏期セミナー)に毎年参加し、全国の混相流研究室の大学院生と交流するうちに、自分もこの分野を発展させる研究者になりたいという思いが蓄積したのを覚えています。2022年夏と2023年春には工学院大の長谷川先生がオンライン若手夏期セミナーを企画し、その中で、修士課程学生のうち半数が博士課程進学を検討しているが迷っているという実情が見えて来ました。混相流学会は、混相流シンポジウムのほか日米、日欧、日中などの国際会議を主催しており、是非ともその場に参加して頂ければ、将来が大きく開けている分野だと体感できるはずです。混相流学会誌には毎年、全国の研究室の博士号取得者とその題目も掲載されています。いま進めている学生諸君の研究は、学会に参加すれば、指導教員だけでなく、全国・世界の研究者が注目していることを知るでしょう。

北海道大学工学研究院 教授

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